2017年05月12日

【絵が上達していくプロセスはなだらかではなくて】

よく感じるのですが、デッサン(絵)というのは、人生みたいだなと。
。。。人生わかったような言い方でちょっとこそばゆいですが。

モチーフを大局的にとらえたり、細かく観察したり。
描き進めるごとに、すでに描いた部分のバランスが崩れたり。
何度も色を重ねたり削ったりしてバランスを取り直したり。
どこまで描けたら完成なのか、止めどころが難しかったり。
思うように描けなくて迷路に入ってしまったり。
でも完成したときは充実感があったり。

ある生徒さんのレッスンで、モチーフの形を整えていく際の、描写の駆け引きの話をしていて、その後「こうやってあれこれ試行錯誤する感じが、デッサンって人生みたいだと思いませんか」とふと言ってみたら、その生徒さんはしばらく沈黙した後に仰いました。

「つまり、諦めてはいけないということですね。」

その生徒さんは、レッスンを始めてから2年半くらい経っているのですが、もしかして、今その人が日々一番大切にしているのが、諦めない、ということなのかもしれません。

さて、デッサンだけでなく、物事を習得していく過程というのは日々どんどん上達していくという感じではないと思います。日によってはなんだか調子が出なかったり体調に左右されるというのもあるのですが、習得するというのは、今までできなかったことができるようになるということなので、「できた」という実感の積み重ねが必要です。

実感を得るためには、新しいことを実践しなければならないのですが、新しいことは誰もが「うまくいかない」ところから始まります。そして、何度も実践を繰り返し、ある日ふっと腑に落ちる瞬間がきて、その時に一段、階段を上ることができるわけです。

その一段というのは、規則正しく用意されているわけではなく、次の一段までがあっさりだったり、いつまでたっても次の一段に届かないこともあるし、次の一段があるのかどうかもわからないこともあります。

ただ、続けていく限り次の一段は必ずあって、その一段の実感まで諦めずに頑張り続けられるかどうかの差なのだと思います。残念ながら、その一段の実感を待てずに諦めてしまう人は結構多い。

生徒さんには、その一段を上れるまでの時間を諦めないでください、とよくお話します。
生徒さんの次の一段のために、私自身もまだしばらく頑張っていたいと思っています。


posted by アトリエうみねこ at 00:25| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月04日

【あくろす主催「大切な人を描いてみよう」終了しました】

4/5付けの調布市報での募集記事のとおり、調布市市民プラザあくろす様の主催にて、初心者様向けデッサン教室「大切な人を描いてみよう」が開催されまして、無事終了いたしました。

今回、最終的に3名の方にご参加いただきました。
こちらは市報での募集記事。

4/5付け調布市の市報


あくろす様にはご縁あって企画にお声がけいただきまして、とても嬉しかったです。
しかも、アトリエうみねこは普段からマンツーマンという規模でのじっくりレッスンが特徴なので、企画のご担当者の方とご相談の上、少人数グループの教室という形での募集にしてくださいました。

さて、今回のテーマは「大切な人を描いてみよう」でした。

内容としては、写真を参考にして顔を中心とした人物画のデッサン講座なのですが、今回は技術的な部分というのはポイントをかなり絞りました。それでもお配りしたテキストは12ページにもなってしまったのですが。

20170504_akuroskouza_01.jpg


今回大切にしたかったのは、「その人が自分にとってどのように大切なのか」という想いの部分です。技術的な側面もさることなれど、「大切な人」への想いが自然に現れてくる絵になるように、いかに誘導していけるのかという点が私の講師としての課題でした。

ご参加くださった皆様は、それぞれ絵を描くことはお好きな方々で、人の顔を描くという点では経験がない。。。ということのようでした。
それでも「描きたい」というお気持ちが強く、描き始めの合図をするとすぐに手が動き始めるという感じで、私の説明に熱心にメモを取られたり、テキストのページを何度も見返したりしながら一生懸命描き進めていらっしゃいました。

1日目はデッサンのポイントの説明と、下絵作成、画用紙へのトレースまで。
2日目はトレース済みの画用紙での制作に集中していただき、適時説明を挟むという進行でした。

そして、2日目に2時間半ほどかけて完成したのがこちらの作品です。

20170504_akuroskouza_021.jpg


皆様それぞれに「ここが似ていない、そこがうまくいかなかった」という点はあったようなのですが、今回一番大切にしたかった「想い」の部分が素直に現れたのではないかなと思います。

実は1日目の内容の中に「構想シート」を書いていただくという時間を作りました。ご自分が描こうと思っている「大切な方」への想いやその方のお人柄、どのような絵にしていきたいかといったことを、ご自分の言葉で色々と書き出して整理していただくための質問シートです。

構想シートは1日目の終わりに私が一度お預かりして全て目をとおし、2日目、制作時のアドバイスに活かしていくための重要な参考資料になりました。

ご参加の皆様の「描きたい」というお気持ちが強かったのは、きっとそれぞれの「大切な人」への想いの強さのためだったのかもしれません。

一人の人間にとって、だれかを大切だと思う気持ちは、本当に色々で奥深いものだと思います。
お一人ずつ、とても深い想いがあり、最後の講評タイムでもそれぞれお話を伺ってジーンとしたのですが、普段は皆様の内に秘めた部分かと思いますので、この記事の中での言及は控えます。

絵にその人を描くことで、その人と絵の中で改めて出会うことができる。
ご参加の皆様の心の入り口を、少しだけ覗かせていただいたような心地で、講座を終了しました。

私にとって、新しい経験が増えました。
そして、デッサン講師としてもっと成長していきたいと、改めて思いました。
今回の講座に関わってくださった全ての皆様に、ありがとうございます。
posted by アトリエうみねこ at 23:51| 各種講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする