デッサン教室を始めようと思った当初、教室=グループレッスン?という漠然としたイメージしかなかったので、現在、マンツーマンという形に落ち着いているのは予想外でもありますが、自然な流れだったのかなとも思います。
時々、それぞれの生徒さんが課題として取り組んでいる事柄にピンポイントに応えられるように、教材を手作りすることがあります。
手作りといっても、ゼロから全部作るというのではなく、ちょっとしたことなのですが。。。
今回は、これ。
基本立体のデッサンのレッスンで使っている球体模型に、細いマスキングテープを利用して、直径部分とハイライトに相当する部分に印を貼り付けただけのものです。
これは、球体のモチーフが苦手で、モチーフをいろいろ変えながら繰り返し「球体を描く」ことにチャレンジしている生徒さん向けに作りました。
球体のデッサンは、稜線や反射光の観察にも非常に気をつかいます。
しかし、レッスン用の部屋の照明の事情もあり、陰影の見え方がわかりづらい状況でレッスンを続けるしかなかったので、図解などを利用しての説明も、図解上では理解できてもモチーフの実物を見たときに実感が得られない。。。という状態のまま、もやもやと月日が経過していました。
球体模型に印を書くことで、あえて稜線の目安を視覚化してモチーフと並べてみたらどうだろう、というのは偶然の思いつき。
しかし、「目安がある」というのは、観察の観点を明確にし、観察ポイントに意識を集中させるのに効果があったようで、今回は今までに比べて少し描きやすかったようです。
この生徒さんは、「球体の陰影のパターンを記憶に定着させる」ことで、球体への苦手意識を少しずつ和らげていけるのではと思い、しばらくこの手作り教材とモチーフを並べながらデッサンをしてもらう予定です。
人間は、明確に知っていること、明確に観察できたことしか、実際に描くことができません。
デッサンする手は、モチーフを見ることによって得られた情報量に比例して動きます。
つまり、見えていないもの、気づいていないもの、頭で整理できなかったこと、は描きようがないのです。
デッサンは観察、と言われるのは、そういうことだと思います。
どうしたら得られる情報量を拡張できるのか、その方法は、描き手の数だけあるのではないでしょうか。
そのためには、生徒さんの様子を見ながらの試行錯誤もあります。
これからも、あれこれ小さな工夫を続けていきたいです。