2017年09月29日

【時間を区切ってデッサンを確認する】

最近、少しずつ試しはじめていることがあります。
生徒さんのデッサンの進捗を10分とか5分とかの短い時間でアラームを設定することで区切り、単位時間ごとに生徒さんにヒアリングをし、次の単位時間にどこをどう描き進めるかを決めてから、また10分とか5分で描いてもらう。

それを繰り返すのです。

ある程度の進捗がみられてからでないとヒアリングも漠然とするので、最初は30〜40分ほど集中して描いていただきます。

その方式を試しはじめた直接的なきっかけはないのですが、ある生徒さんのレッスンでふと思いつきを思い出して試してみて、うまくいきそうな感触があったので、他の生徒さんにも広げていくようになりました。

生徒さんの悩みで多いものに、

ここからどう描き進めたらいいのかわからない
どのくらい描き込まなければならないのかわからない
一ヶ所に集中すると他の所を描くのを忘れてしまう
◯◯な感じにしたいのにできない

というようなものがあるのですが、
デッサンは手順が全て、と言い切る人もいるくらい、進捗を冷静に把握しながら手順を組み立てて進める必要があります。

ただ、進捗を把握しろと漠然と言ってもどうしたらいいのかわからないと思います。

そこで、単位時間を計るということで、強制的に振り返りの時間を作ることにしたわけです。
単位時間を何分にするかは、生徒さんごとに異なっていて、そこは私の直感で決めています。

この方式では、進捗を把握するとともに、次の単位時間で何をするのかを明確にできるので、少なくとも「次どうしたらいいのかわからない」と不安になりながら漫然と描く必要はなくなります。

ただ、やはりヒアリング〜前回ボケボケの写真でご紹介している板書でのまとめ、が肝になるので、よほど的外れの時は別として、できるだけ会話のキャッチボールで生徒さんの自主性を引き出せるようにしなければなりませんし、いまのところ、私自身のキャパシティの問題でマンツーマンの時にしかできないなと思っています。

考える時間を与えると、人は考えるようになります。手順を考え、組み立てながら、デッサンを進められるようになるトレーニングとして、もうしばらく続けてみようと思っています。
posted by アトリエうみねこ at 14:39| Comment(0) | レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月24日

【生徒さんとのヒアリング 〜 陰影より光に焦点を当ててみる】

マンツーマンのレッスンでは、完全に一対一という利点を活かして、継続レッスンの生徒さんに対しては、レッスン中にヒアリングを行うことがあります。

ヒアリングのタイミングというのは、生徒さんご自身に何か迷いや悩みが見えるような時とか、私が生徒さんのスキルに応じて決めているレッスン内容そのものが本当にマッチしているのか?というずれを感じた時とか、なので、定期的に行っているわけではありません。

ヒアリングはこんな感じに、生徒さんの発言を順に板書しながら行います。
(具体的な内容についてはぼかしをかけましたので、板書の雰囲気だけご覧ください)

20170923_01.jpg

ある生徒さんは、ずっと私の方で課題を提示してレッスンを続けてきたのですが、私がその生徒さんに要求していることが生徒さん自身にあまり実感できないということで、途中で大きくレッスンの方針を変えました。

しばらく、モチーフデッサンとヒアリングを繰り返しながら、お互いの考えに一致を見たのが「色の階調幅を広げる練習に集中してみよう」ということでした。

私の最初のレッスンカリキュラム「ベーシックレッスン」では、モチーフ本体の明暗の捉え方は、光源と面との関係を性をざっくりと覚えていただくために、「明るい」「中間色」「暗い」の大きく3階調で観察していただくようになっています。

デッサンの練習を進めるにつれて、その3階調から階調数を少しずつ増えし、微妙な色の変化を観察/描写できるようにしていくのですが、その微妙な色の変化のうち、明るいほうの階調がどうも苦手なのではということになりました。

何度か白いモチーフのデッサンをしてみた後、光が当たることによる明るさをもっと直接的に意識してみようと、キアロスクーロを試してみることにしました。(以下、デッサンは私の制作サンプルです)

20170923_02.jpg

最初は、グレー系の中間色の紙に、黒と白のダーマトグラフを使っていましたが、黒色を使うと「どうしても「陰影を描かなければ」と全体が真っ黒になってしまう」ということで、現在は紙の色を黒にして、白のダーマトグラフだけを使って描いていただいています。

今まで描いたのは、オーソドックスに卵とか、立方体、円すいなど白い物体。

20170923_03.jpg

それから、試しに黒い物体としてナスを描いてもみました。黒いモチーフは、また描いてみたいとのことで、次回レッスンでは別の黒いモチーフを用意する予定です。

20170923_04.jpg

この生徒さんは、現在は黒い紙に白で描くというパターンがなんだか心にマッチするようで、しばらくこれを続けたいとのこと。その後どうするのかについては具体的に決めていません。

ただ、紙=白で画材=黒、から紙=黒で画材=白、と全く逆方向の思考回路を使ううちに、今まで以上にモチーフを注意深く観察するようになり、色の微妙な変化に気付くようになってきたようです。

また丹念にデッサンとヒアリングを繰り返しながら、この生徒さんの今後のデッサンの変化を丁寧に見守っていきたいと思います。

「デッサンは観察が大切」と言葉で言うのは簡単です。
しかし、「観察するとはどういうことか」を、本人が明確に実感するまでの道のりは、ひとそれぞれです。

私は、ただ「観察しろ、よく見ろ」というだけではなく、手を替え品を替え、生徒さんなりにきっかけを掴むための、コーチとかカウンセラーとか伴走者のような役割でいられたらいいなと日頃から考えています。

私も生徒さんも、個性の違う人間同士なので、時にはお互いに噛み合わなかったり停滞する時期もあるかもしれませんが、生徒さんが諦めたくない限り私も諦めないという覚悟でレッスンを続けていきたいです。
posted by アトリエうみねこ at 00:33| レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月17日

【その人に合った考え方の筋道で】

アトリエうみねこは、現在、マンツーマン中心のレッスンです。
デッサン教室を始めようと思った当初、教室=グループレッスン?という漠然としたイメージしかなかったので、現在、マンツーマンという形に落ち着いているのは予想外でもありますが、自然な流れだったのかなとも思います。

時々、それぞれの生徒さんが課題として取り組んでいる事柄にピンポイントに応えられるように、教材を手作りすることがあります。
手作りといっても、ゼロから全部作るというのではなく、ちょっとしたことなのですが。。。

今回は、これ。

球体教材


基本立体のデッサンのレッスンで使っている球体模型に、細いマスキングテープを利用して、直径部分とハイライトに相当する部分に印を貼り付けただけのものです。

これは、球体のモチーフが苦手で、モチーフをいろいろ変えながら繰り返し「球体を描く」ことにチャレンジしている生徒さん向けに作りました。

球体のデッサンは、稜線や反射光の観察にも非常に気をつかいます。
しかし、レッスン用の部屋の照明の事情もあり、陰影の見え方がわかりづらい状況でレッスンを続けるしかなかったので、図解などを利用しての説明も、図解上では理解できてもモチーフの実物を見たときに実感が得られない。。。という状態のまま、もやもやと月日が経過していました。

球体模型に印を書くことで、あえて稜線の目安を視覚化してモチーフと並べてみたらどうだろう、というのは偶然の思いつき。
しかし、「目安がある」というのは、観察の観点を明確にし、観察ポイントに意識を集中させるのに効果があったようで、今回は今までに比べて少し描きやすかったようです。

この生徒さんは、「球体の陰影のパターンを記憶に定着させる」ことで、球体への苦手意識を少しずつ和らげていけるのではと思い、しばらくこの手作り教材とモチーフを並べながらデッサンをしてもらう予定です。

人間は、明確に知っていること、明確に観察できたことしか、実際に描くことができません。
デッサンする手は、モチーフを見ることによって得られた情報量に比例して動きます。
つまり、見えていないもの、気づいていないもの、頭で整理できなかったこと、は描きようがないのです。
デッサンは観察、と言われるのは、そういうことだと思います。

どうしたら得られる情報量を拡張できるのか、その方法は、描き手の数だけあるのではないでしょうか。
そのためには、生徒さんの様子を見ながらの試行錯誤もあります。
これからも、あれこれ小さな工夫を続けていきたいです。
posted by アトリエうみねこ at 00:28| レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする