デッサンを描き慣れないうちは、どの程度やりとりをすればどうなるのか、という実感(経験)を経ていないので、あともう少し粘れば良さそうなのに、というラインで止まってしまう人が多いと思います。私もまだその道の上にいるような気がします。
ある生徒さんのレッスンで、立方体のレッスンのときにも使った「リボンのかかった箱」を、水玉模様の布に乗せた組みモチーフを用意しました。この生徒さんは、最近、モチーフ本体だけでなく下に敷いた布にも積極的に取り組む感じが出てきたので、布にバリエーションを持たせてみようと考えたのでした。

水玉模様は、柄が規則正しいことと、水玉のサイズや間隔が適切でないと見た目の印象も大きく変わるので、あちこち合わせながら描いていくうちに混乱してくることが多いです。
今回の生徒さんも柄の位置合わせでかなり苦労されていて、また濃い地色の白い水玉の描き進め方についても迷っていらしたようなので、一度布全体にタッチを入れてもらい、白い水玉は練り消しゴムで描きながら、水玉のキワが輪郭線にならないよう丁寧に周囲を描く手順をデモしました。
その後、水玉は描ききることができませんでしたが、乗せては取り、取っては乗せる、という手順を何度も繰り返していく中で、布の一部分ですが、タッチの層に深みが出て布の色味や質感が上がってきました。
生徒さんのデッサンを写真に残してきたので、一部をクローズアップしてみます。

この生徒さんは、あまり筆圧も強くないので全体的にタッチが柔らかく、色が思うように乗っていかないのを気にしていらっしゃいますが、今回のような「何度もやりとりを繰り返す」ことで、良い意味でのしつこさで色味と質感を上げられると、柔らかさを生かしたまま、また少しデッサンが変わるのではないかと思います。
時間がかかるのは悪いことではありません。どこまでしつこく取り組むか、その心の持って行きかたを自分でコントロールできるようになることの方が、大切だと思います。