2016年12月14日

【何度もタッチを重ねることで、色味や質感も上がってくる】

絵は描き進めるにしたがい徐々に色が乗ってきて、全体の色やタッチのバランスも常に変化し続けます。本来は、何度も全体のバランスを見直して、色を乗せたり取ったり、描写を強くしたり弱くしたり、さまざまなやりとりをしながら仕上げていく必要があります。

デッサンを描き慣れないうちは、どの程度やりとりをすればどうなるのか、という実感(経験)を経ていないので、あともう少し粘れば良さそうなのに、というラインで止まってしまう人が多いと思います。私もまだその道の上にいるような気がします。

ある生徒さんのレッスンで、立方体のレッスンのときにも使った「リボンのかかった箱」を、水玉模様の布に乗せた組みモチーフを用意しました。この生徒さんは、最近、モチーフ本体だけでなく下に敷いた布にも積極的に取り組む感じが出てきたので、布にバリエーションを持たせてみようと考えたのでした。

umineko_20161214_01.jpg

水玉模様は、柄が規則正しいことと、水玉のサイズや間隔が適切でないと見た目の印象も大きく変わるので、あちこち合わせながら描いていくうちに混乱してくることが多いです。

今回の生徒さんも柄の位置合わせでかなり苦労されていて、また濃い地色の白い水玉の描き進め方についても迷っていらしたようなので、一度布全体にタッチを入れてもらい、白い水玉は練り消しゴムで描きながら、水玉のキワが輪郭線にならないよう丁寧に周囲を描く手順をデモしました。

その後、水玉は描ききることができませんでしたが、乗せては取り、取っては乗せる、という手順を何度も繰り返していく中で、布の一部分ですが、タッチの層に深みが出て布の色味や質感が上がってきました。
生徒さんのデッサンを写真に残してきたので、一部をクローズアップしてみます。

umineko_20161214_02.jpg

この生徒さんは、あまり筆圧も強くないので全体的にタッチが柔らかく、色が思うように乗っていかないのを気にしていらっしゃいますが、今回のような「何度もやりとりを繰り返す」ことで、良い意味でのしつこさで色味と質感を上げられると、柔らかさを生かしたまま、また少しデッサンが変わるのではないかと思います。

時間がかかるのは悪いことではありません。どこまでしつこく取り組むか、その心の持って行きかたを自分でコントロールできるようになることの方が、大切だと思います。


posted by アトリエうみねこ at 12:57| レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月20日

【11月のクロッキー会終了しました。今回は「私服」がテーマ】

11月19日、不定期開催の着衣/指導なし人物クロッキー会を開催しました。
今回のご参加者は4名。
そのうち、ご新規の方が2名にお久しぶりの方1名と、いつもとは少し違う面々での開催でした。

今回のクロッキーのテーマは、私服。

ニットのセーターに、ショートパンツ、厚手の黒タイツ、という組み合わせで、最後の2ポーズはさらにストールを羽織りました。
靴は、前半後半で履き替えをし、前半は厚底パンプス、後半はブーツ。

クロッキー会のご参加者募集の際に、明確にテーマを告知するということはないのですが、ポーズは私自身がしているので、毎回ゆるくテーマ設定をしながらポーズを考えて準備しています。

今回の構成は、10分ポーズと5分ポーズ。同じ靴で、同じ時間×回数を描けるように、以下のような組み合わせで行いました。

20161119_01.jpg

今回は、ポーズそのものよりも、ポーズによってどのように衣服の見え方(シワのより方など)が変わるかとかを見てもらえたらいいなという意図もあり、立ちポーズ、座りポーズ、寝ポーズを混ぜながらも、ポーズそのものはわりとシンプルにしたつもりです。

参加者の方が、昨夜あたりから描いたクロッキーをSNSなどにアップしてくださっていて、
楽しく描いていただけたようでした。

今回は、途中のお茶休憩で、こちらの書籍をみなさんにご紹介しました。
3名の画家によるクロッキーの本なのですが、純粋な教本というよりは、三人三様のクロッキーの楽しみ方のようなものを垣間見ることができる内容です。ポーズ時間によって、例えば10分と1分ではどのように描写が違うのかなども、豊富な写真図版で見せてくれます。

20161119_02.jpg

アトリエうみねこのクロッキー会では、3分とか1分のショートクロッキーをしたことがないのですが、来年あたりは挑戦してみようかなと思います。

次回のクロッキー会は年明けを予定しています。
日時が決定しましたら、またこちらでも告知いたしますので、ご興味のある方は、当アトリエHPからお問い合わせください。
posted by アトリエうみねこ at 16:49| レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月10日

【かたまりって何だろう。。。】

レッスンの始まりのうちは、立方体や円柱や球などの基本立体をモチーフに、光源と物体と陰影の基本的な関係の描写を、練習することが中心になります。

しかし実際のモチーフは基本立体とは異なり、微妙な形をしていますし、質感や色味をはじめ様々な要素を備えています。モチーフが複数の組みになればなおさらです。

一生懸命見て描いているつもりでも、描けば描くほど立体感がなくなっていったり、細かい部分を描き進めているうちに位置がうまく合わなくなったり、いろいろな悩みが出てきます。

以前から、布を描いてみたいとお話していた生徒さんがいらっしゃるのですが、いよいよ布を描こうということで、布の全体的な形態感(かたまり)をつかむため、試しに紙粘土を使ってみることにしました。

教材として検証しながらですが、生徒さんと一緒に紙粘土をこねながら、モチーフを大局的にひとかたまりとしてとらえる練習中。


まず、布をモチーフとして設置し、その布の全体の形を、細部の特徴をできるだけ排した「かたまり」として見ながら、そのかたまりを紙粘土で作ります。

実際のデッサンは、作った紙粘土のかたまりと、実際の布と、両方を見ながら行います。

布を描こうとすると、布の重なり方やシワなどの細部に目が留まりがちです。しかし、その細部の様子を追うだけだと、描いているうちに様々な誤差を調整することができなくなり、全体的なバランスが失われていきます。

モチーフの細かな特徴は、すべてモチーフの全体的な形態の中に含まれています。したがって、細部の観察もさることなれど、デッサンの最初の段階で全体の形態感をつかむことが不可欠だといえるでしょう。

そこで、何かを意識するためには、自分の体を使った実感を得ること以上の方法はないのでは、という仮定をもとに、紙粘土を実際にこねてみようと思いました。

生徒さんが紙粘土をこねる傍で、私も同じモチーフをみて、一緒に紙粘土をこねます。
どこをどう省略していくか、どの部分の形は押さえる必要がありそうか、相談しながらかたまりを作っていきます。

実は、この方法は本当に有用なのかどうか、うまくいっているのか、まだ答えが出ていません。

しかし紙粘土を使ったレッスンは次回で4回目になり、生徒さん自身も何かをつかもうとしていらっしゃる様子なので、もうしばらく一緒に考えながら、続けてみたいと思います。
posted by アトリエうみねこ at 18:16| レッスンの様子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする